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研究者の声
インタラクティブ・メトロノーム(IM)との出会い

私は長い臨床経験の中で、運動機能を回復させるためには、リズムの認識とタイミングの調整が重要だと気づきました。そこで、私は電子工学の専門家と共同で音楽運動療法機器「トントン」を開発し、 高齢者を対象とした臨床研究によって運動機能を高めることがわかりました。

しかし、この機器自体が大規模で多くの空間を要することと電子回路が複雑なため メインテナンスが難しいという致命的な欠点によって開発が途切れてしまいました。

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その後、何かリズムとタイミングの要素を導入した治療法がないか世界中を探していた時に、 このインタラクティブ・メトロノーム(IM)というメソッドに出会ったのです。

アメリカでのインタラクティブ・メトロノーム(IM)

私は科学者としての立場でIMを検証してきましたが、確かになぜ効果があるのかという基礎理論については不明な点もありますが、海外で行われた子供の発達障害や成人の頭部外傷による認知障害を対象とした無作為化比較対照試験(科学的根拠の基本となる研究デザイン)の結果では 認知機能の有意な改善効果が確認されています。

特にアメリカの国防総省で行われた頭部外傷兵士に対するIMトレーニングの有効性については、この領域で最も権威のある神経心理学の専門雑誌(Journal of Neuropsychology)に掲載されています。

また、欧米ではIMトレーニングの実施者が医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、そしてカイロプラクティック医師(米国では医師と同資格)などすべて医療者であり、IMのセミナーは医療者の生涯教育カリキュラムとしても正式に認められています。

日本におけるインタラクティブ・メトロノーム(IM)の可能性

IMの基礎理論となっている時間情報処理(頭の中で60秒を正確にカウントすることや音楽のリズムに合わせて正確にタイミングを合わせるなど)は最近になってようやく文部科学省の科学研究費新学術研究領域「こころの時間学」が認められ、脳科学の最先端研究が始まっています。

この研究成果として、リズムにタイミングを合わせて身体を動かす際に、小脳と大脳が連携して活動することが確認されています。

特に小脳は、身体のバランス調節や運動学習に重要な役割を果たすだけでなく、最近では言語やコミュニケーションなどの高次脳機能にも関与することがわかっており、運動障害だけでなく言語障害や発達障害の改善も期待できると考えています。

さらに、大脳の前頭前野の働きであるワーキングメモリー(仕事の手順やスケジュール調整などに使われる短期記憶)も活性化させることがわかっており、今社会問題となっている認知症の予防にも貢献できると考えております。

まだ我々研究所がIMを日本に導入してから約2年しか経っていませんが、子供から成人そして高齢者まで幅広い年齢層の方々にIMトレーニングを受けていただき、その効果を実感して頂いております。

現在では、研究所の方へ数多くの問い合わせとIMトレーニングの希望が寄せられており、そのご要望に応えるため平成26年4月1日よりIMトレーニング大阪を研究所の所在地である大阪の肥後橋でオープンさせました。IMのすばらしさは体験しないとわかりませんので、ぜひ一度無料の一般公開セミナーへ気軽にお越し下さい。そしてIMトレーニングを十分に体験して頂いた上で、医療者による専門的な認定IMトレーナーをご紹介させていただきます。

皆様のお越しを心よりお待ちしております。

高齢者の転倒予防や認知症の予防・治療に応用する取り組み

神奈川県立保健福祉大学では、三浦市の介護保険事業所と協働で、認知機能を高めるインタラクティブ・メトロノーム(IM)を高齢者の転倒予防や認知症の予防や治療に応用する取り組みを行っています。

認知症は、脳内微細血管の損傷に伴う脳内情報処理ネットワークを構成する神経細胞のダメージによるネットワーク機能の低下が原因だと考えられています。

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これらネットワーク機能の低下に起因する症状として、歩行速度の低下と、歩行リズムの乱れが、認知症の初期から観察されることが最近の研究から明らかになってきました。

ヒトが転ばずに二本の脚で歩けるのは、ありとあらゆる感覚情報を統合して、フィードバック、フィードフォワード、予測的な運動の制御をリアルタイムに行う事ができるからです。この情報処理は、脳内ネットワークをフル活用して行われています。 脳内ネットワークが機能低下を起こすと、情報処理に時間がかかるため、歩行の速度が遅くなるのです。最近の研究から、軽度認知機能障害が認められる高齢者は、歩行速度が 秒速80センチを下回ることが分かってきました。 歩行リズムの乱れも、こうした脳内ネットワークの情報処理能力の低下による環境と運動とのミスマッチによるものだと考えられます。実は、こうした脳内ネットワークの機能低下は、認知症だけではなく、転倒リスクとも密接に関連するため、転倒予防の観点からも、脳内ネットワークに対するトレーニングが注目されてきているのです。 我々の研究結果からも、IMトレーニングが認知症や転倒予防に効果的であるというデータが示されています。

インタラクティブ・リハビリテーションとの出会い

私は理学療法士として10数年間高齢者のリハビリに携わってきました。 その間、日々ルーティーンなリハビリを続けていくにつれて、何かもっと楽しめるリハビリはないものかと考えていた時に、「インタラクティブ・リハビリテーション」というものに出会いました。

このインタラクティブとは「双方向の」や「対話的な」や「相乗効果」という意味があり、セラピストが一方的に施術するのではなく、患者さんも自主的に「参加できる楽しい」リハビリのことです。

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この「参加できる楽しい」がこれからのリハビリには必要だと気づき、インタラクティブ・リハビリテーションを3年程前から導入し実施してきました。
結果として、患者さんが楽しみながら自主的にリハビリに取り組むことで運動機能や認知機能の改善、メンタル面の向上など、かなりの相乗効果を得ることができインタラクティブ・リハビリテーションの可能性に期待を持つようになりました。

インタラクティブ・メトロノーム(IM)の取り組み

IMはリズムとタイミングを合わせて手足を動かすことで、脳神経系の機能を活性化・チューニングさせるリハビリ機器です。 この機器を使ったリハビリによって、運動協調能力やワーキングメモリー、集中力や注意力、判断力、処理能力の改善が期待できると言われています。

対象も子供から高齢者、スポーツ選手や受験生などと幅広く活用され、IMの適応範囲の広さや可能性が期待されます。 当院では通所リハビリの利用者様に対して、言語聴覚士による認知機能の改善、理学療法士による脳卒中やパーキンソンの方への運動機能の改善を目的として取り組んでいます。 IMは欧米を中心に30か国で2万人以上のトレーナーによって実施されている実績から、世界的にも画期的なリハビリツールであることは確かです。 このIMで「参加できる楽しい」リハビリを実施して、地域の高齢者の皆様に少しでも貢献できればと考え取り組んでいきたいと思っています。

身体の再構築⇒自然治癒力の改善+IM=効果的なリハビリ

IMを効率的に使い、効果を上げるには身体の自然治癒力の改善が必要だと考えています。例えば、いくら脳神経を活性化するといっても、脳神経細胞を作るための栄養素や修復機能が不十分であれば、IMの効果も半減し十分な治癒や活性は望めません。 つまり、人体の60兆個の細胞を作る正しい食事、運動習慣、睡眠や考え方などを実践することで、全身の基礎部分を再構築し、本来人間に備わっている自然治癒力や免疫力を上げていくことが非常に大切になってくるとうことです。 特に発達障害やADHDを患った子供たちの自然治癒力や免疫力が本来の働きを始めれば、外から加わるIMの刺激との相乗効果で、さらに効果的なリハビリができるのではないかと考えています。

人体は非常に複雑に絡み合って動いていますから、IMも食事や睡眠や運動と同じ自然治癒力を上げる一つのツールという考えも必要ではないかと思います。 本来の私の理学療法士としての仕事は「基本的動作能力の改善」がメインですが、私が講演している健康セミナーなどでは細胞レベルから身体全体を考える大切さをお話しさせて頂いています。 特に様々なストレスに晒されている先進国の我々の身体は、真の健康体とは言えず、「未病状態」にあると言われています。障害を持たれている方々のみならず、我々一人一人が真剣に細胞レベルからの再構築を考えていかなければならい時が来ていると痛切に感じています。 IMという多くの可能性を持ったツールを使って効果的なリハビリができるように、また定期的なセミナーなどを通して一人でも多くの笑顔を作っていけるように、皆様と共に勉強をして歩んでいきたいと考えています。 「良いイメージが、良い人生を作る」を合言葉に一緒に素晴らしい未来を作っていきましょう!

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